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ワークアットが提供するサービス『work@Matsue』『work@Home&Office』ではこのマインドフルネスヨガや瞑想をプログラムに取り入れています。宍道湖畔など自然の中でのヨガや気分転換としてランニングやウォーキング、サイクリングなども体験いただけます。

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは『今この瞬間に意識を向けてあるがままを観察すること』です。マインドフルネスとは1979年にジョン・カバットジンによりマサチューセッツ大学医学部にストレス低減プログラムとして創始された瞑想とヨガを基本とした治療法です。仕事や家庭のストレスを抱えた人、不安症やパニック障害や不安症やうつ病や不眠症などの様々な疾患をもった人などが実践しています。
 

現在では、疾患を持つ方だけでなく、健康な人のセルフケアマネジメントの実践や生活の質を高める効果もあり、コロナ禍のいま、ストレス対策として身につけたいマインドフルネス瞑想やヨガを通じて多くの人々が実践しています。

得られる効果

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マインドフルネス | 気づく力
マインドフルネス | 受容力
マインドフルネス | 集中力
マインドフルネス | 共感力

※共感力:思いやり、コンパッション

マインドフルネス瞑想がもたらすもの

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マインドフルネスの効果①
マインドフルネスの効果②
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マインドフルネス瞑想やヨガを行うことで、ストレスの軽減、人間関係が良好になる、集中力の向上、生産性の向上などに効果的であることが科学的にも明らかにされており、Googleやヤフーといったグローバル企業や多くの国内企業での導入でも企業研修としてのマインドフルネスプログラムの導入が進んでいます。

マインドフルネス瞑想のようす

マインドフルネス瞑想は、西洋社会を中心に心身の健康を増進するものとして広く認知されています。実のところそのきっかけは,明治26年にシカゴにおいて開催された世界宗教会議での臨済宗僧(釈宗演老師)の講演であると考えられています。つまり、日本人僧の禅に関する講演が、後の西洋社会における禅ブームと深く関わっていると言えるのです。

禅宗は、インド仏教にその起源を持ちますが,開祖は,インドから中国大陸に渡ったかの達磨であると言われています。その後、歴史の変遷とともに中国禅が確立され、その中から臨済や洞山・曹山といった日本の2大禅宗の祖師が現れてきました。そして、栄西や道元により禅宗が日本に持ち込まれ、弟子たちの尽力の結果、国内でその地位が確固としたものとなったのです。

話は戻りますが、明治時代から昭和にかけて、禅の海外普及に大きく貢献したのが、釈宗演老師の高弟である鈴木大拙です。大拙は、禅の書物の翻訳や米国の有名大学において仏教哲学や禅思想の講義をおこない、米国におけるZENの普及に取り組みました。また、当時のアメリカ人の若者が東洋の思想にあこがれを抱いたことや、アメリカ人研究者による禅の研究などが進むにつれ、アメリカ社会においてZENの思想やその実践である瞑想が浸透していきました。

今日では,瞑想を主体とする東洋的アプローチと、新たな経験への気づきに重きを置く西洋的アプローチが、マインドフルネスの分野で注目されています。両者に違いはあるものの、心と体が互いに作用し合い、心身の訓練が私たちの行動や生活の質を改善するという点では、同じ考えを共有しています。そして、マインドフルネスに関する学術的研究をとおして,わたしたちを取り巻く様々な問題に対して好ましい効果を与えてくれることが示されてきています。これらには、加齢や健康問題、メンタルヘルス、セルフコントロール、人間関係、さらには、創造性なども含まれています。

さて、ここからは私の専門分野の認知心理学と脳神経科学の観点からマインドフルネス瞑想の効果をお話していきましょう。マインドフルネス瞑想が、心身の問題に与える効果を検証する臨床研究は、1980年代から始まったのですが、その数は、この20年間で急速に拡大してきました。というのも、わたしたちの心の状態を反映する脳のはたらきを調べる技術が急速に進展してきたからです。病院などの検査でよく使われているMRIはみなさんご存知かと思いますが、この装置を用いることで、マインドフルネス瞑想による脳の体積の変化や脳の活動の変化を高い精度で可視化することができるようになったのです。

2015年に発表されたネイチャー・レビューズ・ニューロサイエンスと呼ばれる著名な雑誌においても、マインドフルネス瞑想が、脳と心に及ぼす効果について詳しく紹介されています(Tang et al., 2015)。この論文では、マインドフルネス瞑想による心の機能の改善には、脳の活動や体積の変化が関わっていることが述べられています。具体的には、マインドフルネス瞑想により,注意や感情のコントロール機能が高まったり、自己の捉え方が変化したりするのですが、そこには、前頭葉や扁桃体といった脳の主要な領域の変化が認められるということです。

マインドフルネス瞑想と注意のコントロール

電車の中で本を読んでいるときに、周囲の声が騒がしかったり、イヤホンから漏れてくる音が気になったりすると、本の内容に集中し続けることは難しくなりますよね。これは、外部から入ってくる妨害情報に注意が引きつけられ、本に対する注意が引き放されてしまうからです。このような状況を実験的に作り出すときには、図1のようなテストを実施します。実験参加者は、真ん中の矢印の方向を判断することを求められるのですが、左側の図のように周囲の矢印が反対側を向いていると、そちらに注意が引きつけられ、ターゲットの矢印の方向を判断するのが難しくなります。実験では、ターゲットの矢印の方向判断に要した時間を計測するのですが、1日20分のマインドフルネス瞑想が、この時間を短縮するという結果が得られています(Yang et al., 2007)。同じような効果が、多数の研究による報告されているのですが、脳内ではどのような変化が起きているのでしょうか。

マインドフルネス瞑想と注意のコントロール

​図1:注意のコントロールが求められる心理学テスト

有力な候補として考えられているのが、前部帯状回(図2)と呼ばれる脳領域の活動の変化です。この領域は、先ほどの例で言うと、矢印の判断が難しいときに活動し、妨害矢印の効果を弱めるはたらきを担っていると考えられています。その結果、ターゲットの矢印に注意を上手く向けることができるというわけです。前部帯状回がしっかりとはたらいてくれれば、騒がしい電車の中でも本に集中することができるかもしれませんね。この前部帯状回ですが、マインドフ
ルネス瞑想により体積が増加したり、瞑想熟練者の瞑想中に活動が増加したりすることが報告されています(Grant et al., 2010)。詳しい関係性については、更なる研究が必要ですが、多くの研究者が,マインドフルネス瞑想が,前部帯状回の仕組みに変化をもたらしていると考えています。

​図2:前部帯状回

マインドフルネス瞑想と感情のコントロール

人間誰しもが不安を感じることがあるかと思いますが、それが強すぎると冷静な判断ができなくなります。例えば、病院の検査結果が気がかりで何も手が付けられなくなるといったことが挙げられるかもしれません。マインドフルネス瞑想は、このような負の感情に対しても上手く向き合う術を与えてくれるようです。図3では、他人が恐怖している顔が画面上に現れ、続いて音が提示される実験場面を示しています。ここで、実験参加者は、できるだけ速く音の高さを判断することが求められます。人間は、共感する生き物ですので、他人の恐怖顔を見ると、自分自身も恐怖を感じます。そして、恐怖の感情状態になると、認知的な判断が遅れるため、音に対する反応が遅れてしまいます。しかしながら、マインドフルネス瞑想の訓練をおこなうことで、そのような恐怖状態の影響が弱まり、冷静に音の判断ができるという結果が得られています(Ortner etal., 2007)。つまり、負の感情に振り回されずに、今、自分が取り組むべき作業に取り組むことができる可能性を示していると言えるでしょう。

​図3:感情のコントロールが求められる心理学の実験課題

マインドフルネス瞑想による感情のコントロールの促進は、前頭葉領域と扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる領域の結びつきの変化が関係するようです(図4)。扁桃体に含まれる神経細胞は、恐怖を覚える映像や音、さらには恐
怖体験の記憶に対して反応することが知られています(Fanselow and Gale, 2003など)。不快な音を呈示し、そのときの扁桃体の活動を計測した研究では、瞑想訓練の時間が長い人ほど、扁桃体の活動が低かったという結果が得られています(Brefczynski-Lewis, J.A. et al., 2007)。後の研究では、扁桃体の活動の低下は,瞑想訓練による前頭葉機能の向上と関係することが報告されています (Lutz et al., 2014) 。つまり、前頭葉から扁桃体の活動を弱める神経信号が送られ、その結果、負の感情の影響が弱まり、冷静な振る舞いができるようになることを示しているのです。

マインドフルネス瞑想と自己認識

「自分は能力がない,何もできないダメなやつだ」と友人が悩んでいる場面に遭遇したことはないでしょうか。仕事で失敗が続いたときなどは、自分自身でもそのように考えるかもしれません。一時的なら良いのですが,習慣的になってしまうと、何事にも消極的になってしまいます。これは、自己効力感や自己受容感が低下している状態ですが、マインドフルネス瞑想は、これらの自己の認識についても好ましい効果を与えてくれるようです。例えば、7日間のヴィパッサナー瞑想により、自己効力感や自己受容感が向上したことが報告されています(Emavardhana &Tori, 1997) 。

この自己認識の変化は、マインドフルネス瞑想の訓練を通して、あれやこれやと自分について考えることが少なくなることが関係するようです。「あれができない。これもできない。」と自己についてあれこれ考えを巡らせるのではなく、今この瞬間に注意を向け、向き合うべき作業に取り組む姿勢が身につくということです。あれこれ考え巡らす状態をマインドワンダリング(心のさまよい)と呼ぶのですが、このとき、大脳新皮質の内側の領域(大脳皮質正中内側部構造,図5)の活動が強まることが知られています(Raichle etal.,2001)。8週間のマインドフルネス瞑想の効果を検証した研究では、「今のこの瞬間に注意を向け続ける力」の訓練により、大脳新皮質の内側領域の活動が低下したことを報告しています(Farbet al., 2007)。マインドフルネス瞑想の訓練を通して、心の中をさまようことが少なくなり、今この瞬間に集中できることに取り組んだ結果、自分の能力や資質を肯定的に受け入れるようになるのかもしれませんね。

​図5:大脳皮質正中内側部構造

以上、マインドフルネス瞑想が心と脳におよぼす効果について、実証研究の結果を踏まえながら紹介してきました。詳しい仕組みについては未解明な部分も多く、今後のマインドフルネス瞑想研究の進展が待たれるところですが、少なくとも、私たちの心身の健康に好ましい効果を与えてくれることは確かなようです。訓練時間の長さが効果の高さと関係するようですので、みなさんも少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献

王超鷹・馬放南(1994)禅の本―無と空の境地に遊ぶ悟りの世界.学習研究社.東京.
Chrsitelle, A.I., Ngounmen, T., & Kanger, E.J. (2014). The Wiley Blackwell Handbook of Mindfulness. John Wiley & Sons, Ltd., UK.
Tang, Y., H ölzel, B. K., & Posner, M.I. (2015). The neuroscience of mindfulness meditation. Nature Reviews Neuroscience, 16, 213-225.
Tang, Y. Y., Ma, Y., Wang, J., Fan, Y., Feng, S., Lu, Q., Yu, Q., Sui, D., Rothbart, M.K., Fan, M., & Posner, M.I. (2007). Short-term meditation training improves attention and self-regulation. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of
America, 104, 17152‒17156.
Grant, J. A., Courtemanche, J., Duerden, E. G., Duncan, G. H. & Rainville, P. (2010). Cortical thickness and pain sensitivity in zen meditators. Emotion 10, 43‒53.
Ortner, C. N. M., Kilner, S. J. & Zelazo, P. D. (2007). Mindfulness meditation and reduced emotional interference on a cognitive task. Motivation and Emotion. 31, 271‒283.
Fanselow, M.S, & Gale, G. D. (2003). The amygdala, fear, and memory. Annals of the New York Academy of Sciences, 985, 125-134.
Brefczynski-Lewis, J. A., Lutz, A., Schaefer, H. S., Levinson, D. B. & Davidson, R. J. (2007). Neural correlates of attentional expertise in long-term meditation practitioners. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 104,
11483‒11488.
Lutz, J, Herwig, U., Opialla, S., Hittmeyer, A., Jäncke, L., Rufer, M., Grosse Holtforth, M, & Brühl, A.B. (2014). Mindfulness and emotion regulation ̶ an fMRI study. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 9, 776‒785.
Emavardhana, T. & Tori, C. D. (1997). Changes in self-concept, ego defense mechanisms, and religiosity following seven-day Vipassana meditation retreats. Journal for the Scientific Study of Religion, 36, 194‒206.
Raichle, M.E., MacLeod, A.M., Snyder, A.Z., Powers, W.J., Gusnard, D.A., & Shulman, G.L. (2001). A default mode of brain function. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 98, 676-682.
Farb, N.A., Segal, Z.V., Mayberg, H., Bean, J., McKeon, D., Fatima, Z., Anderson, A.K. (2007). Attending to the present: mindfulness meditation reveals distinct neural modes of self-reference. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 2, 313‒322.

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国立大学法人 島根大学

人間科学部

准教授 源 健宏 氏

達磨・鈴木大拙
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マインドフルネスの心理学の実験課題
扁桃体

​図4:扁桃体

大脳皮質正中内側部構造
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